【主張】幹部自衛官の定年について

 幹部自衛官の定年について、尉官が55歳、2佐・3佐が56歳、1佐が57歳、将・将補が60歳、幕僚長たる将が62歳となっている。自衛官の定年が若い理由は組織の新陳代謝のため、と言われるが具体的には戦争や災害派遣で万全に動ける年齢が定年以下ということだと推測する。幕僚長たる将の定年が62歳と一般の公務員の定年である60歳よりも高いのは、事務次官等の定年が62歳であることと均衡を図っているのだと思う(給与上幕僚長たる将と事務次官等は等しいことから行政組織上同格とみなしているのだろう)。

 以上のことを以ってして、若くして辞めなければならないのはおかしい!と述べるつもりはない。いざという時に機能しないと意味が無いからである。しかし、それでは自衛官が他の公務員と比べて不遇であるように思える。そこは再雇用を国が全力でバックアップしてほしいと思う。そこのところの具体的な議論はこのままでは自衛隊に人が集まらない時代が来る…自衛官のセカンドキャリアと募集の課題【第34代陸幕長岩田清文⑥】 - YouTubeが参考になると思う。

 さて、今回私が言いたいのは、幕僚長たる将の定年が62歳という点である。自衛隊の組織は大臣等を除けば統合幕僚長を頂点に陸海空の各幕僚長、そして各司令官・総監・・・とピラミッドを構成している。この中で幕僚長たる将は、統合幕僚長・陸海空の各幕僚長の4人のことを指す。先ほど、述べたように組織的には①統合幕僚長②陸海空の各幕僚長という順番である。しかし、定年は①も②も同じ62歳となっている。ここがおかしいのではないかと私は言いたい。

 通常、①の統合幕僚長になるためには、②の陸海空の各幕僚長を1年~2年務めなくてはならない。そして統合幕僚長は通常2年~3年間在任して勇退となる。したがって、統合幕僚長の定年・勇退時期から逆算すると、陸海空の各幕僚長が勇退するのは(浪人経験等が無ければ)59歳前後となるわけである。陸海空の各幕僚長は、同期の中でもトップである。そんな各幕僚長が59歳で辞めるということは、幕僚長でない将や将補が定年である60歳まで働けるとは到底思えない。同期トップが59歳で辞めているのに、トップでない者がそれ以上残り続けるのは組織的に歪であるからだ。

 以上の議論をまとめるとこうである。幕僚長たる将の定年は62歳であるのにもかかわらず実際には59歳前後で辞めており、幕僚長でない将や将補の定年は60歳であるのにもかかわらず実際にはそれよりも先に辞めざるを得ない。つまり、幹部自衛官は定年一杯まで働ける保証が無いというわけである。このようになってしまっているのは、統合幕僚長の定年と陸海空の各幕僚長の定年が同じことに起因する。したがって、私は陸海空の各幕僚長が定年である62歳までしっかり働いて、なおかつ統合幕僚長にこれまで通り2~3年務めてもらうには、統合幕僚長の定年を65歳に延長するべきだと主張する。

 公務員の世界で定年が65歳というのは、何もおかしくはない。病院の医師や裁判官の定年は65歳であるし、国立大学等の大学教員(旧文部教官)も65歳である。最高裁判所の裁判官に至っては70歳が定年となっている。これらに共通するのは身体よりも経験や頭脳が求められている職というわけである。統合幕僚長も大臣の幕僚(参謀)であるため、当然経験や頭脳が求められており、定年が遅い職種に相通ずるものがあると思う。

 以上が私が言いたいことである。一般職公務員の定年が65歳に延長される流れのなか、主に体力が求められている自衛官にそれを適用することは難しいが、せめて制服組トップの統合幕僚長だけでも65歳に変更することができれば、他の階級にある者もしっかり定年までこの国に奉仕できるようになり定年制度が有名無実と化すことは無くなるだろう。