【コラム】各自衛隊の動向~3幕長の挨拶より~

 遅くなりましたが、新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 各自衛隊のHP等を見ると、各自衛隊幕僚長の新年の挨拶が掲載されている。この挨拶文から今年の具体的な抱負が書かれてある部分を抜粋して自衛隊の動向を紹介したい。なお、航空幕僚長の新年の挨拶に関しては、私が確認し損ねたので、元旦から1か月後の挨拶文となる。

 

 ○陸上幕僚長年頭挨拶の抜粋

 令和4年は、我が国を取り巻く戦略環境が加速度的に厳しさを増す中、2035年頃までの我が国の安全を担保するため、国家安全保障戦略、防衛大綱及び中期防の見直しが行われる、分水嶺となる年です。
 陸上自衛隊としても、引き続き「変革の加速」、「実力の進化」及び「信頼の増進」を合言葉に、大胆かつ柔軟な発想により、統合運用の下、我が国の防衛力強化に資するイノベーションを進めて参ります。

 

 ○海上幕僚長年頭挨拶の抜粋

 令和4年においても、海上自衛隊は引き続き日本周辺海空域の警戒監視に万全を期すとともに、米海軍と緊密に連携して日米同盟の抑止力・対処力の強化に努めてまいります。また、世界の友好国海軍との交流を重ね、相互理解を一層深化させることにより「自由で開かれたインド太平洋」の実現を目指します。さらに、本年は海上自衛隊創設70周年となりますことから、各種イベントを企画していきますので、どうぞご期待ください。

 

 ○航空幕僚長1月31日挨拶の抜粋

 本年も早1か月が過ぎましたが、航空自衛隊における私の本年の抱負を、寅年にかけて3つの「トラ」として紹介します。
    1つ目は、内外の厳しい情勢に果敢に挑戦するTry(トライ)、2つ目は、激しく変化する状況に対応するための私たち自身の変革、言うなれば進化するTransformation(トランスフォーメーション) 、そして3つ目は、複雑な情勢下であるがゆえに、風通しの良い組織をつくり、対外的には適時適切に説明責任を果たすTransparency(トランスペアレンシー)です。
    これらをTriangle(トライアングル)の頂点として、バランスよく推進していきたいと考えています。

 

 各自幕僚長のあいさつを並べてみると、各自衛隊・幕僚長の特色があって面白い。

 陸上自衛隊は、中期防等を念頭に置きながら、防衛力強化を謳っている。中期防等は、小野寺元防衛大臣曰く、「防衛費にキャップ(上限)をかける形」となるもので、これを基に各年の予算が決まると言っても良い代物である。だからこそ、中期防の改定作業はもう少し財政に積極的な内閣の下で行われてほしかった。一部から財務省内閣と呼ばれる緊縮的な内閣が、きちんとした国家戦略を意識して作成するのか少々不安に思う処である。

 海上自衛隊は海の外交官らしく、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のために防衛交流を深化させることを説いている。また、海上自衛隊創設70周年のイベントを宣伝しているのが面白い。近年、海上自衛隊には人が集まりにくいという噂がある。艦という外界から途絶された環境に、1日中スマホをいじることに慣れた人間が行こうとは思わないからだろうか。そんな海上自衛隊でも今やYouTubeでオオカミ少佐など元海上自衛隊員が良いところ(や正直に悪いところ)を紹介しているので、そのようなチャンネルを見たり、幕僚長が紹介するようなイベントに参加してみたりすると印象が変わるかもしれない。

 航空自衛隊は、本年の干支にかけて内部組織の変革を試みようとしている。既に井筒幕長は、日経ビジネスにおいて自身の組織観を述べられている。今年はそれを実践に移そうと努力されるのだろう。詳しい内容は以下のURLから飛んで各自で読んでほしい。

上司の指示が少ない組織ほど柔軟な判断ができる理由:日経ビジネス電子版

「昭和型組織」だと、もう危機は乗り越えられない理由:日経ビジネス電子版

 今年も各自衛隊には我が国の守護をお願いして、本コラムを〆る。