次期情報本部長予想

 自衛隊の情報機関のトップである情報本部長の人事を予想する。ここのトップである情報本部長は少し特殊なポストで、①陸海空の持ち回りポストであることと、②同期や後輩から幕僚長が出ても辞める必要のないポストであることが一般的なポストと異なる。

 ①に関して、ここ最近は陸→空→海→陸というローテーションが組まれている。このようなローテーションが見られるのは統合幕僚長等の統合幕僚監部のポストである。現在は、陸上自衛隊出身の納富中陸将がその任に就いている。

 ②に関して、情報本部長は自衛隊情報機関のトップであるが、ここでの経験を活かして後職として内閣衛星情報センター所長の任に就くことが想定されている。内閣情報センターは内閣官房内にあり、立場的に内閣官房防衛省なので、防衛省自衛隊の都合で、内閣衛星情報センター所長に就く人物を辞めさせる(自主退職・勇退させる)のはできないからと推測できる。

 現本部長が、防大29期で、情報本部長が通例2,3年で交代していることを考えると、2019年12月20日から在職している現本部長はそろそろ内閣衛星情報センター所長に上がる時期である。①より次は航空自衛隊出身で、29期+2or3=31期or32期から選ばれることになる。

 私は航空自衛隊のトップが31期から選ばれることを次期航空幕僚長予想 - 自衛隊人事予想blogで予想しているため、航空幕僚長が通常2年程度在職することより、次々期航空幕僚長は33期から選ばれると予想している。そのため、32期からは幕僚長が選ばれないこととなるので、その32期から情報本部長が選出されると予想する。

 情報本部長は指定職5号であり、陸上総隊司令官、自衛艦隊司令官、航空総隊司令官等と並ぶポジションである。さらに後職の内閣衛星情報センター所長は指定職6号であるため、かなり重要なポストであることが分かるだろう(地位・給与面で見なくても情報戦の重要性は先の大戦を踏まえても分かる)。

 32期から選ぶとすれば、上で書いた役職の重要性から32期の1選抜に絞られる。32期1選抜は鈴木康彦統合幕僚副長と阿部睦晴航空幕僚副長である。阿部睦晴空将に関してネットでは経歴がヒットしないので、どちらが情報本部長に近いか分からない。しかし、前情報本部長の代から安倍政権の自衛官地位向上政策の一環(防衛関係費の増額、文官統制(文民統制とは別)の撤廃、元統幕長の勲章1ランク引き上げ、一般曹候補生自衛官候補生の初任給引き上げ等)で、後職の内閣衛星情報センター所長のポストが空かない場合、大使に任命されるルートが新たに開放されたので、英語によるコミュニケーション能力がより高い方に任されるだろう。

【主張】省庁大学校の格差

 私たちが入学するような普通の大学(東京大学慶應大学等)の他に、文部科学省の枠組みを超えた大学がある。それが省庁大学校であり、防衛大学校海上保安大学校などがある。防衛大学校防衛省所管で、海上保安大学校国土交通省所管である。警察庁所管の警察大学校省庁大学校の1つだが、ここは大学を卒業してキャリアとして採用された者や警部に昇進した警察官が通うところであり、今回私が議論したい高校卒業直後に通う大学校では無いため、議論の対象外とする。

 高校を卒業して入学し、公務員として給料を貰いながら通い、卒業する際に外部機関に申請し学位が貰える省庁大学校防衛大学校防衛医科大学校海上保安大学校気象大学校の4校である。防衛大学校は将来の幹部自衛官になるための教育施設で、防衛医科大学校は将来の医官・看護官になるための教育施設、海上保安大学校は将来の幹部海上保安官になるための教育施設、気象大学校気象庁の中核となることを目的に設置された教育施設となっている。

 今回私が問題視するのは、上で挙げた教育施設のうち、相対的に防衛大学校防衛医科大学校の給料の低いことである。上記4校の月額給料(期末手当等除く)を以下に記す。

防衛大学校防衛医科大学校:117,000円

海上保安大学校:150,600円

気象大学校:159,636円

 募集要項等を確認すると以上のようになっていた。気象大学校の給料には地域手当も含まれており、純粋な給料で見れば、海上保安大学校と同額となっている。ということは防衛大学校防衛医科大学校の学生が他2校に比べて安い給料で働かされていると言える。これは国が提唱する同一労働同一賃金の観点からしておかしいのではないだろうか。気象大学校防衛大学校と異なり体力錬成はしなくても良いだろうから仮に比較の対象外としたとしても、海上保安大学校では防衛大学校のような内容の取り組みが行われていると考えられるためである。防衛大学校では軍隊教育が行われているだろうから、海上保安大学校よりも辛いかもしれない。そのように考えると、海上保安大学校よりも給料が低いのはやはりおかしくて、むしろより高くても良いとさえ思える。しかし、どのように厳しいかは実際中を見て比べてみないと分からないので海上保安大学校よりも防衛大学校の給料を高くしろとまでは言わないが、やはりバランスを取ってほしい。

 他の学校は詳しく知らないが、防衛大学校は体育系のクラブに入ることが必須となっており、そこで半強制的な朝練や夜練、休日練などがあった場合、時間外手当などを考慮しなければならないかもしれない。それを抜きにしても、117,000円という給料水準が最低賃金以上なのか疑問である。もちろん公務員に労働基準法が適用されないことは知っている。しかしながら、公務員も人であり、民間よりも先に国が労働者の人権を大切にしていることを見せつけないと、示しがつかないのではないだろうか。

 もしも、防衛省の予算が少なくて以上のような事態に陥っているのだとすれば、背広組幹部も制服組幹部も省庁間の力関係で言えないだろうから、政治家が財務省に意見をしてほしいと思う。

【主張】幹部自衛官の定年について

 幹部自衛官の定年について、尉官が55歳、2佐・3佐が56歳、1佐が57歳、将・将補が60歳、幕僚長たる将が62歳となっている。自衛官の定年が若い理由は組織の新陳代謝のため、と言われるが具体的には戦争や災害派遣で万全に動ける年齢が定年以下ということだと推測する。幕僚長たる将の定年が62歳と一般の公務員の定年である60歳よりも高いのは、事務次官等の定年が62歳であることと均衡を図っているのだと思う(給与上幕僚長たる将と事務次官等は等しいことから行政組織上同格とみなしているのだろう)。

 以上のことを以ってして、若くして辞めなければならないのはおかしい!と述べるつもりはない。いざという時に機能しないと意味が無いからである。しかし、それでは自衛官が他の公務員と比べて不遇であるように思える。そこは再雇用を国が全力でバックアップしてほしいと思う。そこのところの具体的な議論はこのままでは自衛隊に人が集まらない時代が来る…自衛官のセカンドキャリアと募集の課題【第34代陸幕長岩田清文⑥】 - YouTubeが参考になると思う。

 さて、今回私が言いたいのは、幕僚長たる将の定年が62歳という点である。自衛隊の組織は大臣等を除けば統合幕僚長を頂点に陸海空の各幕僚長、そして各司令官・総監・・・とピラミッドを構成している。この中で幕僚長たる将は、統合幕僚長・陸海空の各幕僚長の4人のことを指す。先ほど、述べたように組織的には①統合幕僚長②陸海空の各幕僚長という順番である。しかし、定年は①も②も同じ62歳となっている。ここがおかしいのではないかと私は言いたい。

 通常、①の統合幕僚長になるためには、②の陸海空の各幕僚長を1年~2年務めなくてはならない。そして統合幕僚長は通常2年~3年間在任して勇退となる。したがって、統合幕僚長の定年・勇退時期から逆算すると、陸海空の各幕僚長が勇退するのは(浪人経験等が無ければ)59歳前後となるわけである。陸海空の各幕僚長は、同期の中でもトップである。そんな各幕僚長が59歳で辞めるということは、幕僚長でない将や将補が定年である60歳まで働けるとは到底思えない。同期トップが59歳で辞めているのに、トップでない者がそれ以上残り続けるのは組織的に歪であるからだ。

 以上の議論をまとめるとこうである。幕僚長たる将の定年は62歳であるのにもかかわらず実際には59歳前後で辞めており、幕僚長でない将や将補の定年は60歳であるのにもかかわらず実際にはそれよりも先に辞めざるを得ない。つまり、幹部自衛官は定年一杯まで働ける保証が無いというわけである。このようになってしまっているのは、統合幕僚長の定年と陸海空の各幕僚長の定年が同じことに起因する。したがって、私は陸海空の各幕僚長が定年である62歳までしっかり働いて、なおかつ統合幕僚長にこれまで通り2~3年務めてもらうには、統合幕僚長の定年を65歳に延長するべきだと主張する。

 公務員の世界で定年が65歳というのは、何もおかしくはない。病院の医師や裁判官の定年は65歳であるし、国立大学等の大学教員(旧文部教官)も65歳である。最高裁判所の裁判官に至っては70歳が定年となっている。これらに共通するのは身体よりも経験や頭脳が求められている職というわけである。統合幕僚長も大臣の幕僚(参謀)であるため、当然経験や頭脳が求められており、定年が遅い職種に相通ずるものがあると思う。

 以上が私が言いたいことである。一般職公務員の定年が65歳に延長される流れのなか、主に体力が求められている自衛官にそれを適用することは難しいが、せめて制服組トップの統合幕僚長だけでも65歳に変更することができれば、他の階級にある者もしっかり定年までこの国に奉仕できるようになり定年制度が有名無実と化すことは無くなるだろう。

次期海上幕僚長予想

 次期海上幕僚長として私が予想するのは、伊藤弘海将(32期)である。このように予想する理由は、①期別(年齢)、②略歴、③印象である。

 ①に関して:次期海上幕僚長を予想するにあたって考慮しなければならないのは次期統合幕僚長である。統合幕僚長に関しては、公平性の観点から陸→空→海というローテーションが組まれているので、次は空ということになる。統合幕僚長が来年交代するタイミングを迎えることを考えると、来年に現在の井筒航空幕僚長(30期)が統合幕僚長となる。また、現任の山村海上幕僚長の就任日が現任の統合幕僚長の就任日と同日であることを考慮すると、退任のタイミングも同時と考えて良い。このことと、統合幕僚長海上幕僚長が通常2~3年務めることを考えると、次期海上幕僚長は次々期統合幕僚長ということになる。したがって、32期~33期組から選ばれることとなるが、佐官以下の定年延長に伴い34期1選抜が未だに海将となっていないことを考慮すると、33期から海幕長を選抜するのは難しいと考えられる。よって32期から選抜するのが組織にとって合理的であるというわけである。

 ②に関して:海上自衛隊では人事・防衛・教育をやることがバランスのとれた配置(『統合幕僚長(河野克俊著)』より)らしい。過去の海幕長の略歴を見るとバランスがとれなくても海上幕僚監部筆頭部署の防衛部で防衛班長・防衛課長・防衛部長(これらに統合幕僚監部防衛計画部長や防衛課ナンバー2の防衛調整官を加えることがある)を務め上げる3防でも幕僚長に近づくことになる。

 私が予想する伊藤海将は、人事教育部筆頭課の人事補任課長、防衛大学校訓練部長、統合幕僚監部防衛計画部長(同日に内閣官房国家安全保障局へ出向)と大変バランスのとれた経歴となっている。伊藤海将は補給本部長も経験しており、人事・防衛・教育に加えて補給もバッチリである。補給(兵站)の重要性は歴史が証明しており、最近補給職種出身の村川海将が幕僚長に就任したことからも海上自衛隊が補給の重要性の引き上げていると考えて良いだろう。また、内閣官房への出向は大きな加点ポイントと言える。内閣官房は全省庁の司令塔としての役割が期待されていて、各省庁のエース級が出向する。このうち内閣官房国家安全保障局経験者として有名なのは現陸上幕僚長の吉田陸将である。東大出身の吉田陸将が陸幕長に就任したのは、この内閣官房への出向が結構効いたと思う。

 また、アメリカ留学経験も大きい。各幕僚長の主要な任務に国際交流があり、各国軍の参謀総長等と頻繁に会うことになる。現在の海上幕僚長である山村海将が米海軍長官を英語で出迎えている動画が海自twitterに上がっている。他の幕僚長も英語能力があると推測できる(吉田陸幕長は外務省出向経験あり・井筒空幕長はアメリカ留学経験あり)ことから幕僚長になるための必要条件として英語能力はあると考えられる。その点伊藤海将コロンビア大学院留学、アメリカ中央軍連絡官、統合幕僚監部防衛交流班長を歴任していることから、英語能力に関して申し分ない。

 そして、伊藤海将の経歴の中で最も目を惹くのは第151連合任務部隊司令官である。第151連合任務部隊はソマリア沖の海賊対処行動を任務とする部隊であるが、これは日本単体の部隊ではなく多国籍部隊である。その多国籍実働部隊の司令官に日本の自衛官で初めて就任したのが伊藤海将である。後が続くためにも特に最初の人は失敗できない。だから当時の海上自衛隊で最も優秀な自衛官を配置したと考えれる。そのようなことも伊藤海将を推す理由である。

 ③に関して:先ほど②の最後で挙げた第151連合任務部隊司令官就任に際して記者対応した動画がANNからYouTubeに上がっている。ここでは素敵な笑顔で上品かつ余裕のある対応を見せている。ここでの立ち居振舞いを見るだけで、惹きつけられるものが感じられるのではないだろうか。少なくとも私は惹かれた。②で述べたように幕僚長の主要な任務の1つは国際交流である。各国制服組トップと会談する時、印象の良い方が好ましいに決まっている。そのように考え、伊藤海将を推すわけである。

 伊藤海将は現在舞鶴地方総監である。舞鶴地方総監から直接海上幕僚長に上がった例は無いと思うが、同じ指定職3号の海上幕僚副長から海上幕僚長に就任することは良くあることなので、海上幕僚副長と同格とみなせばあり得なくはない。もし、統合幕僚副長のポストがこの冬に空から海へ切り替わったら、統合幕僚副長へ異動して、将来の統合幕僚長としての経験を積んでから海上幕僚長に就任する可能性が考えられる。舞鶴地方総監から直接上がるか統合幕僚副長を間に挟み込むかは、①で述べた統合幕僚長の交代時期によることになる。もし、交代時期が~2022年春だとすれば、統合幕僚副長に就任して3か月以内で次に交代ということになり忙しいので地方総監からそのまま上がることになる。もし、交代時期が2022年夏~だとすれば、統合幕僚副長等他の役職で十分経験を積めるので、間に挟み込むだろう。

次期航空幕僚長予想

 次期航空幕僚長の予想に関しては、多くの予想屋と同じく内倉浩昭空将(31期)を挙げる。理由は、アメリカ留学経験と3防である。

 アメリカ留学経験は国際交流に重きを置く幕僚長の資質として大きなウェイトを占めると考えられる。なお、現在の航空幕僚長アメリカ(ハーバード大)留学を経験している。

 3防に関しては、航空幕僚監部の筆頭部局である防衛部の要職(防衛部長・防衛課長・防衛班長)を歴任することである。このほかに統合幕僚監部防衛計画部長や防衛課防衛調整官(防衛課ナンバー2)も防衛部の要職に含めることがある。激務で有名な中央でも、海外や内閣、与党からプレッシャーのかかる部署ということもあり、これらを務め上げるということはある意味1つの勲章である。そうした勲章を3つ集めた超人を3防と敬意を込めて呼ばれるわけである。

 就任時期は次の統合幕僚長航空幕僚長から上がられることを想定すると、現在の山崎統合幕僚長の任期がちょうど3年となる2022年春と予想する。

次期陸上幕僚長予想

 現在の吉田陸幕長(防大30期相当・東大)から陸幕長の直前ポストが各方面総監から陸上総隊司令官に変わった。陸上総隊自体新しい組織で過渡期ということもあり、断言はできないが、これを踏襲すると考えると、次期陸上幕僚長は陸上総隊司令官の前田忠男陸将(防大31期)と予想する。

 通常各幕僚長は2年程度在任する。定年は62歳だが、実際には60歳までに退役することが多い。これはおそらく、組織の新陳代謝統合幕僚長の定年も62歳であることが関係していると考える。後者を詳述すると、統合幕僚長は陸海空のいずれかの幕僚長を務めた後に任命される。統合幕僚長を2~3年務めることを考えると、その直前ポストである各幕僚長は57歳(相当早くて56歳)~58歳で任命されることとなる。そこから2,3年で60歳というわけである。

 次期陸上幕僚長に前田陸将を予想する理由としては、年齢や直前ポストの他に、①アメリカ留学を経験していること、②装備計画課長、第1空挺団長、防衛部長を歴任していることを挙げる。①のアメリカ留学であるが、各幕僚長の主要な任務に国際交流がある。ということは英語能力は必須と考えて良い。最近Twitter海幕長が米海軍長官を出迎えている動画が上がっていたが、流暢な英語で会話していた。他の幕僚長もこのように会話しているのだろうと想像できる。②で挙げた装備計画課長は第34代岩田陸幕長、第36代山崎陸幕長(その後第6代統幕長)が就任したことのあるポストであると共に、それを包含する装備部の部長ポストは第31代折木陸幕長(その後第3代統幕長)、第37代湯浅陸幕長が就任したことのある非常に重要な組織となっている。装備計画課は装備部の筆頭課であることを考えると、その課長ポストの重みも分かってくるのではないだろうか。第1空挺団長は言うまでもない。海・空と異なり人事・装備系が強い陸では防衛部長を経験することは陸上幕僚長になるための要件では無かったように思えるが、現在の陸幕長が防衛部にて培ってこられたことを考えると、組織のバランスに変化が生じたと考えられる。そういった点も理由に含められる。

 陸幕長就任の時期については2022年秋と予想する。